《MUMEI》 …そして数日後。 再び家に電話が鳴り響きました。 その電話を取ったのは、兄でした。 電話の内容を聞いた兄は、険しい表情で家族に告げました。 「―女の子を殺した犯人、死んだ。実家に戻ってきた時、火事が起きて、1人逃げ遅れたんだって」 「ああ、やっぱり…」 弟がぼそっと呟いた言葉は、家族全員の心の声でした。 「うちの血縁者に関わってはいけなかったのにね」 「…しかも殺しなんて恐ろしい真似をすれば」 「地獄を生きたまま、味わうことになるのね」 弟の言葉に続き、父や母も力なき声で応えました。 そう…不思議ではないことなのです。 犯人が酷い目に合いながら死ぬことを、わたし達、血縁者達は全員分かっていたことですから。 ちょっと昔の話になります。 わたし達、血縁者のご先祖は力の強い、呪術師だったんです。 しかし時代と共に、廃業になりました。 そこまでは良かったんでしょう。…時代的にも。 しかし呪術師は己の血にまで、その術と力をかけていました。 …ゆえに我らの血縁者は、強く人を惹き付けるのです。 そして酷い目に合わせたり、殺したりなんてするものならば…生きたまま、地獄を味わうのです。 わたし達血縁者は、そんなふうに地獄を味わう人々を、この目に焼き付け、生き続けなければならないのです。 だって、誰にも解決法を知らないんですから。 そうまるで、『呪い』のように―。 ああ、そう考えると、わたし達血縁者達も、 『かわいそう』…なんですね。 前へ |
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