《MUMEI》
遠距離恋愛のキス
「帰って来れないって、どーゆーことよっ!」

『だっだから、こっちにも付き合いってモンが…』

こっち、と言う言葉に、涙が浮かんだ。

「…あっそ。じゃあ、ね!」

ピッ! とケータイを切って、ベッドの上に投げ付けた。

「一ヶ月も会えないとは、何なのよぉ!」

叫んだ後、深く息を吐いて、冷静になった。

…分かっているのよ、本当は。

今、わたし達は高校三年生。大事な時だ。

そんな大事な時に、遠距離恋愛ってのは正直辛い…。

イヤでもイライラしてしまう。

「でも…好きだしなぁ」

付き合って一年目で、彼は親の仕事の関係で、遠くへ引っ越してしまった。

それこそ新幹線を使わなきゃ行けない所へ…。

彼はバイトしてお金を溜めて、こっちへ来てくれる。

わたしに会いに…。

なのにわたしときたら。

「はぁ…。受験ストレス、溜まってるなぁ」

本当はわたしもバイトをして、彼の所へ行きたかった。

でも彼はこっちに帰りたいって言うから、ただただ待つばかりの彼女になってしまった。

そう…わたしには待つことしかないのに…。

「なのに、あのアホウ!」

最近では向こうでできた友達付き合いがあるとかで、結構会うのをキャンセルしてくる。

そのたびに、胸が張り裂けそうな思いをしているのはわたしだけなの?

もう、別れた方が良いのかな?

ついイライラして、彼に当たってしまうことも増えてしまった。

自分で自分がイヤになる。キライにも…なるってもんよ。

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