《MUMEI》 せっかくの週末も、行く所は図書館だけか。…しかも一人で。 「まっ、しょーがないか…」 最近では立ち直りも早くなる。 ケータイを拾うと、彼からは何も来てなかった。 向こうも、もういい加減うっとおしく思っているのかもしれない。 それでも…良いと思えてしまう自分がイヤだ。 彼のことは、好き、なのに…。 モヤモヤした気持ちを晴らしたくて、わたしは部屋を出た。 …ケータイを置いて。 週末の公園は結構賑わっている。 わたしは奥へと進み、とある場所を目指す。 この公園は山一つを使って作られたもの。 だから奥の方に行くと、街を一望できる秘密の場所がある。 その場所は彼に教えてもらった。 何かとイラ立ちやすいわたしを心配して、教えてくれた。 彼がいない時も、たびたび訪れてた。 彼との思い出が詰まっているけど、不思議と辛くはなかった。 目の前に広がる景色を見ると、モヤモヤして気分も考えもスッキリするから。 「すぅー、はあ…」 何度か深呼吸して、落ち着いた。 誰もいない秘密の場所。わたしはベンチに座った。 前へ |次へ |
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