《MUMEI》

そして頭の中が空っぽになると、眠くなってきた。

最近…寝不足だからな。

そのまま目を閉じて…。

「…い。オイって!」

「えっ…わっ!」

肩を揺さぶられて目を開けると、目の前に彼が…いた。

「えっええ!? 何で?」

「何でって、お前…」

彼は息を切らし、汗だくだった。

「あんな電話の切り方しといて、何だよ…」

「何って、いつものイライラじゃない」

少し眠ったおかげか、あっさり返してしまった。

「…ったく。心配して来たのに」

彼はそのまま私の隣に座り込んだ。

わたしはハンカチを取り出し、彼の顔の汗を拭いた。

「ごっゴメン! 最近、ちょっと受験ストレスで…。でもわたし、あなたのこと好きだから!」

「なっ!」

彼がぎょっとして、目を見開いた。

「別れるとか言わないでね!」

「それはコッチのセリフだ!」

彼はいきなり立ち上がった。

でもすぐに、その表情を曇らせる。

「…不安にさせて、悪いと思ってる」

「うん…」

「でも、もうちょっとの辛抱、してくれるか?」

「もうちょっとって?」

きょとんとしていると、彼はバツが悪そうに向こうを見る。

夕日に染まる街を。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫