《MUMEI》

そう言って、わたしの頭を撫でてくれる。

やがて涙は止まり、わたしはヒドイ顔で彼を睨み付けた。

「黙っていることも、不安にさせるって、分かってる?」

「あっああ。マジでゴメン」

しゅん…と落ち込む彼の頬を、両手で包んだ。

そして、わたしの方からキスをした。

「…っ!?」

彼の体が一瞬震えた。

けれどそのまま、時が止まったかと思うぐらいに、唇を合わせていた。

彼のあたたかな優しさが、唇から伝わってきた。

「…不安にさせたくないなら、言うこと、分かってるわよね?」

「あっああ」

彼は顔を真っ赤にしながらも、ぎゅうっと抱き締めてくれた。

「お前のこと、好きだ」

「…うん! わたしも大好きよ」



―そしてわたし達は、夕日が沈むまで、そこにいた。

二人で寄り添って、いっぱい話をした。

やがて暗闇が訪れ、わたしは笑顔で彼を見送った。

多くの人の中に紛れ、帰り道を歩きながら思う。

きっと、わたし達の距離は今1番近くなっている。

そう、見上げた月と星が寄り添っているように。

わたしと彼の心も、側にある。

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