《MUMEI》

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久しぶりにに会った風子は、やつれきっていた。

肌はくすみ、目の下にははっきりと隈が浮かんでいた。髪の毛も手入れをしていないようで毛先はほつれ、伸び放題だった。

瞳は虚ろで、唇は乾き、まるで廃人のようだ。

「先輩のこと、残念だったね…」

痛ましい姿の風子と向かい合って、晶子がようやく声をかけた。俺はこんなとき、何と言って良いのか判らず、黙っていた。

「ホントに死んじゃったんだね…」

風子は一度瞬いて、舌の上で転がすようにゆっくり呟いた。

沈黙が辺りを覆った。

風子の部屋のテレビがつけっぱなしになっていて、そのステレオから、若い男達数人が爆発事故に巻き込まれたとのニュースが、ひっきりなしに流れていた。

重い空気に耐えられず、俺は俯く。

目の前にあるローテーブルの足下に、週刊誌が無造作に置かれていた。そに載っていた、『大手銀行支店長 横領疑惑…原因は不倫か』という、どうでもいい見出しを、ぼんやり眺めていた。


しばらく、黙り込んでいると、


―――世の中は、狂ってる。


風子が風のように、ふんわり囁いた。


俺は顔を上げて、風子を見た。彼女は俺や晶子を見ておらず、ただ虚空を見つめていた。


その言葉は、先輩を不慮の事故で失った哀しみからなのか、それとも己に降りかかったあの『事件』のことなのか、判らなかった。



ただ、重たさを感じない、その抑揚が、彼女の様々な心の傷を物語っているようで、とても辛かった。



―――そして、



風子と面会してから、1週間も経たないうちに、



彼女は自ら命を絶ったのだ…。



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