《MUMEI》

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―――参列者による収骨が終わると、係の職員が台車に残された骨を、箸と刷毛を使って丁寧に集め、骨壺に納めてくれた。


風子の母親は位牌を持ち、骨壺と遺影は他の親族が抱えて、列を成し、収骨の間から立ち去った。


一同が火葬場から外に出ると、すでにシャトルバスが待機していて、俺達は順番にそれに乗り込む。


―――修くん…。



バスに乗る直前、

不意に誰かに呼ばれた気がして、俺は、空を見上げた。



瞬間、眩しい青空が視界に飛び込んでくる。俺は、目を細めた。

「どうしたの?」

後ろから晶子が不思議そうに尋ねてきて、そこでようやく俺は我に返り、「…何でもない」と淡く笑って見せた。


全員がバスに乗り込むと、乗車口のドアが閉まり、ゆっくりと発車する。

バスの揺れに身を任せながら、俺は窓から外に広がる空を一心に見つめていた。



どこまでも続く、この青空は、

昔、風子と共に眺めたものと何にも変わっていない筈なのに、

今、その下にいる俺達は、

大きく何かが変わってしまった。


それが、何より辛かった。



「よく晴れてるね…」

突然、隣に座っていた晶子が俺に言った。俺は、一度、晶子を見遣る。

彼女は澄んだ瞳で、まっすぐ空を見つめていた。

俺は、窓から再び空を眺めて、「そうだな…」と呟くと、晶子は、「風子は晴れ女だったよね」と笑い、


「あの子らしい、お別れの日だよね…」


と、ぽつんと続けた。俺は、何も言わなかった。空を見つめたまま、ただ、バスの揺れに身を任せていた。



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