《MUMEI》

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―――風子の母親に挨拶を済ませ、俺は自分の車に晶子と、母親から受け取った紙袋を乗せ、斎場を後にした。



最寄りの駅で晶子を降ろしたとき、彼女は俺に「送ってくれて、ありがとう」と、礼を言った。

「お疲れさま…って言うのは不謹慎だね」

彼女の台詞に、俺は「そうだな」、と肩を竦めた。それを見た晶子は軽く笑い、それから「…じゃあ、またね」、と小さく呟いて、車のドアを閉めた。


車の中にいる間、晶子は、例の風子からの手紙について、何も言わなかった。何て書いてあるのだろうとも、読んだら内容を教えてとも。


全く気にならなかったことはないだろう。

あれだけ仲良くしていた友人が謎の自殺を遂げ、しかも、彼女の直筆の手紙が目の前で見つかったのだから。

それでも尋ねなかったのは、彼女自身、きちんと理解していたからだ。


―――風子が、なぜ、晶子ではなく、俺に手紙を遺したのか。



それは、俺だけに、どうしても伝えたい『何か』があったからだ、と。



俺は、駅へ向かい、段々小さくなっていく晶子の姿をしばらく眺め、それから車の後部座席に目を遣った。


シートの上に、無造作に置かれた紙袋。


それは、今、異様な程の存在感を放っていた。



風子は、なぜ、死ぬことを決意したのか。

死ぬ直前、風子は、何を思ってペンを執ったのか。

どうして、最期の手紙に、俺を選んだのか。



様々な想いが、俺の中で交差する。


全ては、あの手紙に書かれている。


そう思ったら、いても立ってもいられず、俺は車を発進させた。


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