《MUMEI》
「今すぐその子に電話して向こうから此処に来てもらわんかい、ほら向こうから来るんが筋やろ」
「…そんなん筋ちゃうわ」
オカンは煙草に火を付け、一口吹かし
「女から将来の姑に頭下げに来るのが筋や、なあ、おとうちゃん」
ちらりとオトンを見ると…
俺を哀れんだ目で見ていた。
強きなのは最初だけな小心者のオトン。オトンはオカンの犬だ。
俺は絶対あんな風になんないぞ!!
「まあ今から電話せい、話は女が来てからや」
▽
ボスボスボス…
「参った〜…」
聖ちゃん可愛いけどどっからどうみたって男の子。
どうしようどうしようどうしようどうしよう…
天井から無理矢理吊されたサンドバックを叩きながら俺は携帯を開けたり閉じたり。
あ、中学入った頃から無理矢理通わされたボクシングジム、上京してから辞めて今その月謝で塾に行ってる事黙ったままなの忘れてた。
ああ、後ろめたい事だらけだ。
『♪♪♪♪♪』
「〜〜聖ちゃあん」
ディスプレイには聖ちゃんの名前…。
ああ…
「もし…」
…ガヤガヤ
『貢今どの辺?』
……電話なんか騒がしい…
「今…実家だけど…まさか聖ちゃん…」
『エ〜ッ!実家??俺新宿駅まで迎えに来ちゃったよ〜!』
「エエッ!新宿!新宿まできちゃったの?……」
わざわざ新宿まで…
あーなんか嬉しい…
「話早そうやないか」
「!!!わっ!ちょっとオカンっ!」
オカンにジャンピングで携帯をぶん取られた。
慌てて取り戻そうとするが
「ひじりちゃん?はじめまして、アタシ貢のオカンです」
「ああ…」
オカンは一気にまくし立てだし、何度か満足げに頷いた後俺に携帯を返し、部屋を出て行った。
「ごめんね聖ちゃん、来なくていいからね?」
『えー!行くよ!次のあずさで行く!待っててねっ!』
「エエッ!ひじりちゃ…ひじ…」
プープープープー…
「……、聖ちゃあんっ!」
俺は…俺達は…
大丈夫なんでしょうか??
あ、つかさ…
俺まだ聖ちゃんにオカンの過去と、俺のチームの総長の過去明かしてない…。
大阪いたときにボクシング習ってた事とちょっぴり喧嘩強かった話しかしてない…。
だって、だって温室育ちのお坊ちゃまの聖ちゃんに本当の事とても言えなかったんだ。
全部話すなんて言いながらまだ言ってないんだ。
どうする!
俺
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