《MUMEI》

ドサリ!と音がして
殿下の身体が床に落
ちる。

『レイノルド殿下』
慌てて駆け寄るロイ
ズ。

『くっ…もう少しだ
ったのに…』
忌ま忌まし気にユウ
リを睨む殿下。

ユウリは、そんな視
線など、気にも留め
ずに、傷付いた白の
介抱をしていた。

『…っ、はっ…』

白の息が荒く、苦し
げに身体を揺らして
いたから…ユウリの
意識は、白に集中し
ていた。


そして、扉は開かれ
た。


『白!白!』

必死な叫び声と共に
夢視が飛び込んで来
た。

殿下の居る場所のす
ぐ目の前に…。


『ゆ、夢視?』

殿下は、嬉しげに声
をかけた、だが、焦
る夢視に、その声が
聞こえるはずもなく
…夢視は殿下に気付
く事無く目の前を走
り去ろうとした。


ーえ…夢…視?ー

キイィィィン…ンン…
キィィィィンン…キィィィ…ンン

最悪のタイミングで
殿下の暗示が解けよ
うとしていた。


ーー夢視も僕を見て
くれないの?ーー


〈お前さえ…いなけ
れば…〉

ーー夢視も僕がいらないの?ーー


〈あの人の元へ行け
るのに…〉


殿下の瞳は…白の元
へと走る夢視を映し
出していた。

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