《MUMEI》 手記. 修くんへ。 いきなりこんな形で手紙を書いて、ごめんなさい。 この手紙を受け取って、とても困惑していると思います。修くんの、あの困った顔が目に浮かぶようです。 でも、最後にどうしても伝えたいことがあって、ペンを執りました。 気味が悪くて読みたくないかもしれないけれど、お願いです。最後まで読んでください。修くんにだけは、知っていて欲しいんです。 『あの日』の真相を。 修くんがわたしを迎えに来てくれた、あの夜からのことを。 修くんも知っているように、わたしは藤川先輩とだらしない関係を、ずっと続けていました。 先輩は、いきなりわたしの前に現れて、散々わたしの心を掻き乱しては、突然、何も言わずに姿を消してしまう。 まるで、風のような人でした。 先輩の勝手気儘な振舞いに疲れたわたしは、その鬱憤を他の人と適当に遊ぶことで心のバランスを取っていたのでしょう。 他の男の気持ちを弄び、飽きたらいとも簡単に捨てることで、心の中で、先輩を見返していたのかもしれません。いつも先輩が、わたしにしていたように。 遊び相手は決まっていませんでした。 専門学校の人だったり、バイト先の仲間だったり、ナンパしてきたサラリーマンだったり…。『手当たり次第』とは、まさにこのこと。 正直、誰でも良かった。 わたしの心の隙間を、一瞬でも埋めてくれるなら、誰であっても。 けれど、ホントは心のどこかで待っていたのかもしれない。 先輩の奴隷と化したわたしに、救いの手を差し伸べてくれる人が、現れるのを、ずっと。 でも、残念ながら、そんな人が現れることもなく、 次第に、わたしの生活は荒んでいきました。 男との刹那的な関係に溺れ、瞬間的な快楽を貪るように求めていたわたしは、きっと、動物以下のものに成り下がっていたのでしょう。 そんなわたしは『あの日』、その罰を与えられたのです。 . 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |