《MUMEI》

.


『あの日』、わたしは急に先輩に呼び出され、彼のアパートを訪ねました。

先輩に会うのは本当に久しぶりのことだったので、求められているという嬉しい気持ちと、今まで蔑ろにされていた悔しい気持ちが、ない交ぜになっていました。

それでもたぶん、嬉しい気持ちの方が勝っていたのだと思います。


だからこそ、何の疑いもなく、のこのこと彼に会いに行ったの。


先輩のアパートに着いてすぐ、変だな、と思ったんです。

玄関に、たくさんの男物の靴が並べられていたから。そんなことは、今まで一度もありませんでした。

不思議に思いつつも、わたしは部屋に上がりました。

部屋の中は真っ暗でした。

夕方過ぎでしたが、外はまだ明るいのに、もうカーテンを閉めていたようです。


やっぱり変だな…と思ったのですが、先輩に会わないまま引き返すのも嫌で、キッチンを抜け、先輩の部屋に入った時、


わたしはびっくりして、足を止めました。


部屋の中には、先輩がいました。ベッドの上で寛いでいる、いつもの姿。


いつもと違うのは、見知らぬ複数の男達が、床の上に座っていたことでした。


状況が把握しきれず、戸惑うわたしに先輩は面白そうに、笑って言いました。


「『メイン』が来たぞ」、と。


先輩の声に応えるように、その男達が一斉にわたしの方を振り返って、ニタニタ笑いだしたのです。

意味がわからないわたしはただ困惑し、そこから動けませんでした。

そんなわたしをよそに、先輩は彼らに言いました。


「『パーティー』を始めようか」


嫌な予感がしました。

でも、もう手遅れだったのです。


先輩の掛け声に、男達は立ち上がり、一斉にわたしに掴みかかってきました。

わたしは本当にびっくりして、男達に抵抗しようとしましたが、多勢に無勢。女一人の力では、どうすることも出来ず、わたしはズルズルと引きずられるように、ベッドへ連れていかれました。


わたしがベッドに倒れ込むと、男達はジャンケンを始めました。そしてそれが、『順番』を決めようとしていることに、気づきました。


わたしの身体をマワす、その『順番』を。


.

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫