《MUMEI》

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『あの日』以来、わたしは自分のアパートに引きこもりの生活をしていました。

外に出るのが怖かった。道行くひとが皆、わたしが男達に襲われたことを知っているような気がして。

仕事も、辞めました。とてもじゃないけれど、平気な顔をして働く気になりませんでした。

収入はなくても、生活には困りませんでした。

昔、付き合った銀行員から、愛人契約として、膨大な『手当』を貰っていたからです。彼は、銀行の金を横領して、わたしの他にもたくさんの女を囲っていたようです。
おかげで、何の未練もなく退社することが出来ました。



とにかく何に対しても興味が沸かず、とても無気力で、

生きている実感が、ありませんでした。


朝からずっと、カーテンを閉めきり、真っ暗になった部屋の片隅で、わたしは自分の膝を抱えて、小さくなっていました。


そして、考えていました。


どうして、こんなことになってしまったのか。

何を間違ってしまったのか。



来る日も来る日もずっと悩み、考えて、


そんなある日、


ぼんやりと床に目を遣った時、


そこに散乱していた雑誌やら新聞やらの中に無造作に混ざっていた、


一枚のチラシを、見つけたのです。


『復讐代行致します』


そのチラシには、そんな感じの言葉と、携帯の番号が書いてありました。

普段なら、そんな意図の読めないものなど気にも留めないのですが、


―――あの時は、

何かにすがりつきたくて、

忌まわしい現状から逃げ出したくて、


気づいたら、チラシを手に取って、記載されていた携帯番号に電話をかけていたの。



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