《MUMEI》 . ちょうどその頃、 わたしの携帯に、スガイから連絡がありました。『復讐代行』の料金を受け取りたいとの事でした。 わたしは、銀行から全財産をおろして、その金を紙の手提げ袋につめると、そのままスガイとの待ち合わせ場所へ向かいました。 待ち合わせに指定されたのは、都内の公園でした。 その中にある噴水の前のベンチに、スガイは前に会った時と同じ格好で座っていたので、すぐに見つける事が出来ました。 わたしは黙ってベンチに近寄って、二人の間に紙袋を置き、彼のとなりに腰を下ろしました。 「あんたの望み通りになったか?」 スガイはぽつんと尋ねました。 わたしは少し黙ってから、「わからない」と答えました。 わたしのエゴの為に、たくさんの人達が犠牲になった。 こんなことになるなんて、考えてなかった。 わたしの呟きにスガイはため息をついて、「確認した筈だ」と、冷たく言い放ちました。 「あんたはあいつらに復讐してくれと頼みに来た。俺はその依頼を全うしただけだ」 そこまで言って彼は紙袋を持ち上げると、わたしの顔を見ずにベンチから立ち去って行きました。 小さくなっていく彼の後ろ姿を眺めながら、 『爪痕には爪痕を』 そこでようやく、その考えが間違っていたことに気づいたの。 とんでもないことを仕出かしたのだと、とても怖くなりました。 勿論、先輩達がわたしにした事はけして許される事じゃありません。 けれど、 わたしは、どうでしょうか。 自分の欲望に従い、多くの人達を苦しめたわたしは、 結局、彼らと同じ事をしただけです。 それを痛感しました。 それからは、ただただ後悔の日々でした。 わたしを心配して、修くんと晶子は、わざわざ会いに来てくれたよね。 あれが、一番、堪えました。 わたしは、大切な親友達の善意を、裏切っているって。 昔のように、3人で集まって無邪気に笑ったり出来ないんだって。 愚かなわたしは、その尊い『資格』を、自らの手で永遠に放棄してしまったのです。 今さら気づくなんて、ホントに馬鹿だよね。 . 前へ |次へ |
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