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《MUMEI》 . 全ての復讐を果たして、憎しみの対象を無くした今、わたしは生きる糧を、失いました。 わたしは、自ら自分の、この歪みきった人生を終わりにしようと思います。 勿論、わたしが死んだことでみんなの苦しみが軽くなるわけでは無いことは、承知しています。 でも、もう、耐えられない。 ―――ずっと昔、まだ高校生だった頃、 世界は美しい、と、 世の中は素晴らしい、と、 本気でそう思っていました。 けれど、 それは違います。 修くん、 本当は、世界は汚くて、腐っていて、狂ってるんだよ。 美しいのは、ほんの一部で、 それ以外の大半は、わたしを苦しめ、傷つける、化け物みたいな暗闇しかないんだ。 その闇の部分を垣間見てしまったわたしは、もう、とても独りでは生きていけない。 全てから逃げて、自由になりたいのです。 ―――弱いわたしを、 修くんは、軽蔑するでしょうか。 修くんに嫌われるのはとても辛いけれど、こんなことになってしまった以上、それは仕方のないことだと思います。もし、わたしが修くんの立場だったら、そんな我が儘、きっと許せない。 でも、それ以外の『道』を、わたしには見つけられないの。 言い訳がましく思うかもしれないけれど、 最後に、ひとつ。 ―――修くん、 どんな時も修くんが傍に居てくれて、わたしは本当に幸せでした。 修くんみたいな人と付き合えていたら、もしかしたら、わたしはこんなことにはならなかったのかもね。 いつも、考えてた。 君の隣にいるのが、わたしだったら良かったのにって。 下らないことを笑い合って、辛いことは分かち合って、 そうやって、『ごく普通の恋愛』を、一度でいいから、わたしもしてみたかった。 もう、遅すぎるけれど。 長くなりました。 そろそろ終わりにするね。 これから、高校の屋上へ行きます。せめて楽しかったあの頃の想い出と一緒に、最期を迎えたいから。 修くんの幸せを、遠い場所から見守ってるよ。 最後まで読んでくれて、ありがとう。 迷惑かけてごめんなさい。 晶子に、よろしくお伝えください。 さよなら。 ７月２１日 片倉 修平様 . 澤井 風子 . 前へ |次へ |
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