《MUMEI》

「美作、考え方だよ。例えばさ、今日の晴天。」

内館の開けっ放した窓から二人、空を眺めた。


「雲は一つある。」

鼻で笑ってしまった。


「でも青空……あ、あれは肉まんに似ていて美味しそう。」


「いやいや、あれは餃子だろ。」

形は円ではない。


「愛おしくなった?」

吹き出してしまう。


「愛おしいと美味しそうを並べるとは……」


「例えだってば、似てるでしょ。」

些細なことを懸命に弁論しようとする彼はなんだか可愛らしい。


「そうだね、人を愛するのには、食べたり寝たりするよね。」


「そういう意味じゃないんだけど……。」

分かっているが、わざとだ。
妙なとこで本気で捕らえる彼は面白い。


「君がそんなに一生懸命にならなくてもいいじゃない。」


「恋とか愛とかも不意に見付けたりする。最初からそこにあるものなのに気付いたりしてね。
美作は素っ気なく見られがちだけど情に厚いから、もっと人を好きになっていいんじゃないか?
俺の好きな美作を皆好きになってくれたら嬉しいし。」

は……恥ずかしい!


「破廉恥だね。」

こんな恥ずかしい言葉平然と言う人種がまだこの世に生きていたとは。


「え?」

それも彼にとっては自然なことなのだろう……侮れない。

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