《MUMEI》
だいたいオカンが早く帰ってこいってならなきゃ聖ちゃんが寂しがらなかったんだ。
いや、本当は…
クリスマスにちょっと立ち寄ったのが一番の原因だったんだけど。
なまじっか顔だしたから早く帰ってこいとごねられ俺は渋々28日に帰省したのだ。
「ああ…、俺どうしよう…」
聖ちゃんの声位の女の子ってたまにいるから絶対オカンは女の子だって信じてる。
それに友達ですなんて聖ちゃんの事、聖ちゃんの前で紹介は不可能だ。
だって俺達、聖ちゃんの親にはカミングアウトして堂々と付き合ってるんだもん、だからこっちだけ内緒って訳にいかないし、いずれこっちもカミングアウトしなきゃならない事は良くわかっている。
わかってる、わかってんだけどさ!それが今いきない今なんてああ、ああ、ああ、ああ………
「貢さっきからブツブツ煩いねん」
「うわっ!オカンッ!」
いつの間にか後ろにオカンの姿。
「なあ、貢の連れ、着替えもなしに手ぶらで来さすねんから変えの下着買うてやり?ほら、ついでに駅にも迎え行って!ほれ!」
オカンは俺に数枚の千円札を差し出してきた。
「ほら早く!可哀相に見知らぬ場所に一人向かってんやで?男やったら守ってやらんかいボケ」
「あのなあ、可哀相に思うんなら来いとか最初から…」
バチィンッッ!
「い、イタアッ!」
ま、またひっぱたかれたッ!!今のぜってー跡残る痛さだったッ!!!
「このクソガキがっ!イチイチごちゃごちゃウッサイんじゃボケッ!
仕方ないやろ!おかあちゃんは東京が苦手なんじゃ!だから向こうから来るのが筋なんじゃあッ!」
「「…………」」
向こうから来て貰う本当の理由はそれですか…
はあ…
・
前へ
|次へ
作品目次へ
ケータイ小説検索へ
新規作家登録へ
便利サイト検索へ
携帯小説の
(C)無銘文庫