《MUMEI》 「はぁ〜〜〜ぁぁ…………」 駅前広場のベンチに腰を下ろし、この世の終わりのような盛大な溜め息を吐き出す。気分はどん底。浮き上がる要因なんて欠片すらない。 バイト先とは別の店で買ったハンバーガーを片手に、死んだ魚のような目に風景を映し込む。 スーツ姿のサラリーマン達を目の前の駅が吸い込んでは吐き出す作業を飽きる事無く繰り返している。その中には真新しいスーツがまだ似合わない、この春社会人デビューしたばかりの若い姿も数多く混ざっていた。 本当だったら今年から、僕もあの中の一人だったはずなのに…………。 手にしたハンバーガーを一口食べる。砂を噛んだような味しかしない。 別にバイトをクビになったのは今回が初めてってワケじゃない。 これまでに僕は10回バイトをクビになっている。その大抵が1月か2月程度。早いところでは3日なんて所もあった。 そんな中、今回の4ヶ月は、よく続いたと自分でも感心する。だからこそ、だからこそ今回は大丈夫だと思ったのに…………。 それにしたってクビの理由が『気持ち悪いから』ってなんだよ。そんなの理由になってないじゃないか! 前のバイト先もその前のバイト先も同じような理由でクビにしやがって。僕の何が気持ち悪いっていうんだ!? 顔だって二度見されるような面白フェイスはしてないし、ファッションだって流行りを外さないように気を使っている。もちろん、身だしなみにも男にしては時間をかけてる方だと思う。 言っちゃなんだが、僕より気持ち悪いヤツなんか、目の前を往き来してる連中の中にだって幾らでもいるのに、どうして僕だけピンポイントで『気持ち悪い』なんて言われなくちゃいけないんだっ!? 「はぁ〜〜〜…………」 また、溜め息が口から漏れる。溜め息をつくと幸せが逃げるって言ったのは誰だったろう…………。 紙コップから突き出たストローに口を付ける。気の抜けたコーラ程不味いものはない。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |