《MUMEI》
愛好会
「なんか大学生の頃思い出した……。」

二郎が俯く。


「あー、あのアパート潰れたんだってな。」

すき間風とか酷かったオンボロアパートだ。


「そうなんだ。寂しいね。」

「初同棲の思い出の場所だったもんな。」

まだ親には言ってなくて秘密の関係だった。


「初……まあ、そうか。実家も半同棲みたいなもんだったけどね。」

妙に棘がある言い方だ。


「……思い出して、ムラムラってなった?」

二郎の大好きなリズムで耳元で囁いてやると案の定、動揺しておたまを落とした。
隙のある姿に、口許が緩んでしまう。
ただ、その素直さが二郎の魅力であり、付け入られるとこでもあるのだが。

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