《MUMEI》

自転車で約15分

目的地に到着してみても
やはり、こんな建物見た事がない…


この通りは、何百回と通った事があるはずなのに


生まれてからずっと…

年数にして約16年間
この町に住んでいるが、記憶の片隅にさえない…



古い木造の平屋

壁は、真っ黒に塗りたくられている

同じく真っ黒い看板には金字で『妖怪屋本舗』と彫られている



こんなに目立つ建物が記憶にないなんて…


おかしな事もあるもんだ





僕は、意を決してチャイムを押す




しばらくすると、引き戸の奥で人の気配がした


それまで、前髪を整えていた両手を慌てて下ろす



『ガラガラガラガラ』


建て付けの悪い引き戸が大きな音をたて、開いた

…!!!


中から、ぬっと現れたのは、身長2メートルを超える大男


筋骨隆々の体にスキンヘッド、眼の下には、大きな隈…


この人はヤバい


本能的に、体が震える



「…」


無言のまま、僕をじっと見つめる大男…



蛇に睨まれた蛙の如く
立ちすくむ僕…



しばらく、その硬直状態が続いたあと、大男がボソッと呟いた




「…そうか…オマエが、ヨイチか?」

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