《MUMEI》

.

 気まずい――っ!!


 無言で前を歩く櫻井さんの背中に、言いようのないプレッシャーを感じる。

 こういう時は黙っていた方がいいのか?それとも何か話しかけた方が、やっぱり大人の対応というやつなのだろうか?

 けど、話し掛けるったってどんな話題を出せばいいんだろう。

「いい天気ですね」

 いやいや、そんなので会話が弾むワケ無いじゃないか。それじゃあ、

「過ごし易い季節になりましたね」

 これもあんまり変わらないな。

「『霊障清掃局』なんて場所が本当に在って良かったですよぉ(笑)」

 って、バカか?僕はっ!?

 他人から見れば実に些細な、はっきり言わなくてもどうでもいいと言える事に心苛まれている内に、目の前を歩いていた櫻井さんが、突き当たりの扉のセンサーにカードキーをかざして開けようとしていた。

 やった。着いた――!

 もう下らない事に悩まなくて済むと思った瞬間、思わず顔が緩む。

 櫻井さんに続き扉を潜ると、さして広くない室内の向かいの壁に、またエレベーターの扉があった。


 ええぇぇぇ――――――――っっっ!!


「ん?どうしました?」

 その場に凍り付く僕に、さっさとエレベーターに乗り込んだ櫻井さんがいぶかしげに尋ねる。

「え、や……はは、何でもありませんです、はい」

 照れ隠しに頭を掻きながら、櫻井さんに習いそそくさとエレベーターに乗る。

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