《MUMEI》
逃げる
「……よし」
しばらく考えてユウゴは頷いた。
「どうするの?」
ユキナが息を切らせて振り向く。
「逃げる!」
「…もう逃げてんじゃん」
呆れたようにユキナが言った。
「この流れから逃げるって言ってんだよ」
「それは、わかるけど。大丈夫?あいつら、撃ってくるんじゃないの?」
ユキナはちらっと後ろ見た。
無言で追ってくる警備隊たちは皆、手にお揃いの軍用銃を持っている。
「だな。この位置はまずい。前へ出るぞ」
そう言って、ユウゴはスピードを速めた。
「え、ちょっと待って」
慌ててユキナはユウゴを追う。
「で、どうするの?わたし、もうけっこう、やばいんだけど」
先頭集団に入り込みながら、ユキナが言った。
ゼハゼハと不自然な呼吸音が聞こえてくる。
表情も苦しそうだ。
しかし、それはユウゴも同じこと。
一歩一歩、足が地面を踏むごとに、体が痛む。
腕の傷もだが、今までに受けてきた小さなダメージが溜まり溜まって、表にでてきた感じだ。
疲れのせいもあるのだろう。
「待つんだよ」
「何を?」
「爆発」
「……それって、誰かが死ぬのを待つってこと?」
「そうだ。爆発が起きた一瞬だけ、警備隊の注意も逸れるはず。煙で目隠しにもなる。その隙に」
「そんなの……」
非難するように、ユキナはユウゴを見た。
その視線をしっかり、ユウゴも受け取る。
「わかってる、でも」
「……他に手はないんでしょ」
ユウゴはゆっくり頷いた。
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