《MUMEI》 「二郎……、引っ掻き傷。」 首に赤い筋があるのが気になってたのを指で辿った。 それが 引き金になった。 「……っ!」 狭い家で二郎が急に暴れ出したので宥めるのに苦労したものだ。 後ろから不意を打たれるのは、安西の件で知っていたから、前を見て落ち着くようにゆっくり言い聞かせた。 「じろー……」 何度も何度も呼び掛けて、震えを止めてやる。 「俺……いやらしいの?誘ってるの?だから、みんな、変な気になるのかな。」 誰に言われたんだ。 可哀相に、怖い思いをしたんだな。 雛を温めるように二郎を抱きしめた。 前へ |次へ |
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