《MUMEI》 . 『マジで!?やった!!すっげー嬉しい!』 わたしの返事に、隆弘はとても喜んだ。まるで幼い子供のように、無邪気で明るい声で。 それから、わたし達は気軽に連絡し合えるよう、お互いのメールアドレスを教え合って、 最後に、 『都合見て、会う日を決めよう』 「はい」 『また、連絡するよ』 「わたしもメールします」 『それじゃ、おやすみ』 「…おやすみなさい」 簡単な挨拶を交わして、彼は電話を切った。携帯が急に黙り込み、ツー…ツー…と、無機質な機械音だけが耳に残る。 わたしはゆっくり携帯を耳から離す。 ―――電話を終えてからも、 まだ、信じられなかった。 わたしに、一目惚れした、と。 会って、話がしたい、と。 そう、真っ直ぐ語りかけてきた、隆弘。 携帯を握りしめたまま、わたしは、ゆっくり部屋を見回す。 わたしが座っている、すぐ傍に、全身が映る、大きな姿見があった。 茶色く染めた、長い髪。 近眼の眼鏡。 Tシャツにジーンズという、適当な服装。 いつも通りのわたしの姿が、鏡に映っていた。 ―――鏡の中の、自分の姿を眺めながら、 ぼんやりと、語りかけた。 …信じても、いいのだろうか。 隆弘が言ったことを、まるごと素直に受け取っても。 わたしは、傷つかないだろうか。 二人を繋ぐ、僅かな糸がプツン…と途切れて、わたしは再び、深い、深い孤独の海を一人ぼっちで泳ぎ始めたような、寂しさを感じていた。 . 前へ |次へ |
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