《MUMEI》

「木下っていつ筆おろしたんだ?」

相変わらず、内館は情緒のかけらも無い男だ。


「知ってどうする。お前は女子か。」

木下君も引かないな……。


「木下まさかまだ、誰とも付き合ってないとか……なあんて……。」

出鱈目を言うな……と、口を挟もうとしたところだったが明らかに木下君の反応が変だ。

「目が泳いでる」

しまった。
つい、内館に加勢してしまった。


「付き合ってはいたよ!」

よほど思い出したくなかったか、木下君、"は"って言っちゃってる。


「木下可愛いなあ。」

内館の声は無駄に大きいからサークルの飲み会にだと端から端まで響いて赤っ恥だ。
今の一言で女子も食いついて、木下君の童貞話が知れ渡った。
庇いきれない状態でひたすら酒を流し込み、ごまかした。



「恋人は居たのよね?」

木下君が姦しい女子に囲まれてしまった。

「木下君積極性が無いからよ〜」

あんたらに彼のことをどうこう言われる筋合いは無いな。

「試しに誰かと付き合えばいいんじゃない?」

彼にも選ぶ権利はあるだろうに。

「そうだ木下君、それじゃあキスは?この中でなら誰としたい?」

元凶の内館がノリノリで女子の中心を仕切っていることが何より気に入らない。

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