《MUMEI》

.




「解散!」








ストレッチが終わり、ぼろい体育館に部長の声が響く


俺ら一年は直ぐさまネットを片付け…






ああ、言い忘れてたけど

俺は中学の時からバレーボールをしてるんだ





「…で」

俺はネットの紐を外しながら隆之に訊いた





「さっきの話、何?」


「…ああ」

隆之は一瞬下唇を噛んだけど



頷いて話し始めた



「俺の妹が、いわゆる…その、《腐女子》でさ」

俺は隆之と眼を合わせずにネットの紐3か所を取った

それからアンテナを取って、ようやく視線を隆之に流す



「…で?」

「で…そういう、ゲイとかのムービーを拾って携帯に入れてんだ。」


「ああ」

俺はアンテナを持って用具入れへ歩く

隆之は手ぶらでついて来た


「で、さ。俺…勝手に妹の携帯見たことがあって。…ムービーの多さにビックリしたんだけど」

「はあ。」


用具入れの棚にアンテナを突っ込む
--ガシャ--


「あ゛」


アンテナがぶつかってホイッスルが入ってたケースが落ちた

思わず舌打ちしてたけど


隆之の話は軽く聴いてた


「そん中にさ、いたんだ」

俺はしゃがみ込んで


「何が」


散らばったホイッスルを広い集める


相づちも、きっと適当だったろうな

ごめんな隆之



「見覚え…ある奴」

「だから…誰」





でもアイツはそのまま続けてくれた

「多分な?多分だぞ?」


俺は再びホイッスルを入れたケースを
荒々しく棚に置いた

その衝撃でアンテナが落ちそうになって


「で…誰だよ」


片手で押さえて、戻した


隆之が言うべきか悩んでるのが背中を向けてても分かった

「…多分さ」














「秀一なんだよな」

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