《MUMEI》

大抵、夜遅くなり一人になった時が奴らの狙ってくる時間だ。

信号待ちや、人気の無い小さなトンネルを抜ける際に逢った。

俺達の作戦は、二郎が学校または飲み会の席で早引きをする、道すがら落とし物をして、それを拾ってストーカーする犯人をストーカーし、現行犯を捕まえて痛め付ける。
シンプルでありながら成功率100パーセントだ。

ちなみに今も実行中。
二郎のか細い後ろ姿を付け狙う男は、いつもの信号待ちで二郎の腕を引いた。
それが合図になっている。

すかさず俺は足元を狙うも今回の奴は受け身が上手い。
懐に入ってバランスを崩させてから地面にたたき付けて身ぐるみを剥いだ。

これを写真に納め、反省させてお仕置き完了……だった。


そしてシャッターを切ろうと構えた二郎に見惚れてた隙を見計らってすり抜けられた。
最早、格闘技だ。

結局は、俺が目潰しで勝利する。

「ぎゃああ!」

のたうちまわる奴を見下ろしながら、二郎のカメラを受け取り二、三枚撮った。

ある程度落ち着いてから、

「金輪際二郎に近付くなよ。」

と、言い聞かせハッピーエンドなのだが……。


「……理不尽だ、犯罪だぞこれは!」

……ん?


「変態に言われたくないな!」

減らず口を叩く変態だ!


「いきなり襲ってきて何をするんだ……!俺はただ間違って俺の鞄を持って行った木下を追いかけただけで……」


「あっ、俺の鞄じゃなかった……!」

二郎が学生証で確認する。楠 文博と言う写真と顔が一致していた。


「もー、二郎ったらうっかりさん!」

二郎の頬を優しく突く。


「まずは俺に謝れよ!」

これがきっかけで楠とは仲良くなった。
楠曰く、付き纏われたらしいけど、俺は仲良くなったと思っている。

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