《MUMEI》
出現
(キャ―)
(ワァ――)
…なにやら騒がしい。「くそ、ぐっすり寝てたのに。なんだ?」
目を擦り声のする前の方を見ると天井にゴルフボール大の穴が空いている。そして、その下には褐色の肌にサングラス、黒いタンクトップにジーンズという出立ちで大男が仁王立ちしている。周りの人のおそれようだとどうやらその男が原因のようだ。
穴の縁に火がついているところを見ると、彼が火の玉か何かになって飛んできたのだろう。(そう彼は恐らく感染者だ。感染者とはつまり超能力者みたいなものなのである。Zoウィルスは人間のなにかに影響して超人的力を与える。曖昧な説明だがほんとに地球ではこれくらいしかわかっていない。)その褐色の大男の隣になんの前触れもなくいきなり小女が現れた。
「遅いぞ。」
大男が図太い声で時計を見ながら言った。
「いいじゃない、1分くらい。」
突然現れた少女も周りが驚き恐れるのを全く気にしない様子で言った。
「さてと、始めるぞ。まず、お前は感染者がいないか探せ。」
大男がこっちの方をさせてる。
「わかってるわよ。いちいち、しきらないで。」
そう言うとこっちに向かって歩き始めた。少女はボソボソ言いながら何かスピードガンのようなものを乗客に当てている。
「違う。これも違う。」
青年に近付くにつれ、ボソボソが聞き取れてきた。
そして、青年の番が。少女が青年のすぐ隣に。近くでみると、少女は案外背が低いだけで少女ではないことに気付いた。青年と同じくらいだろうか。

「なに!?」
彼女は感に触ったように言った。
なにせ、ほかの乗客はずっとうずくまってだった彼女が過ぎるのを待ってるからだ。
その点、青年は鈍感だった。
「まぁ、いいわ。」
彼女はスピードガン的なものから出る緑の光で頭から腰までを照らした。すると、スピードガン的なものがピー―と甲高い音を出した。
「やっぱ、いた。」
なぜか、彼女も驚き、大きく目を開いていた。
「ねぇ〜ダリル。いた。」
反対方面で何かしらやっている大男のことだろう。ダリルがひょこっと顔を見せた。
「なんだ未来??いちいちしきらないでだろう??俺に聞くな。」
ダリルはニヤニヤして言った。
「じゃあ、いいわよ。」
また眉にしわをよせて言った。この女は飛行機にきてからなぜかずっと不機嫌だ。
「お前。感染者??」
指を顔に指され彼女が聞いた。
顔に指を指されお前呼ばわりだが不思議とムカつかない無邪気さがその声にあった。

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