《MUMEI》

マルクスは、殿下の
会話を黙って聞いて
いたが、殿下に一つ
質問をした。


『殿下、殿下はいく
つにおなりかな?』

殿下はマルクスに笑
顔を向け、10歳だよ
と答えた。


『『!!』』

マルクスとロイズは
互いの顔を見た。


『…幼児退行…』

マルクスが呟く。
耐え切れない事実か
ら、自らの心を守る
為の防衛策として、
意識が幼児に戻る事
がある。


『そんな、じゃあ殿
下は、ずっとこのま
まで?』


『いや、多分、一時
的なモノだと思うが
ね…現実を、事実を
認めたくないのだろ
う。自分の犯した過
ちをね…』


ロイズは泣きそうな
顔で殿下を見つめた


『ロイズ、どーした
の?泣いちゃダメだ
よ、僕より大きい癖
に泣き虫なんだから
さ…』

にっこりと笑う殿下
は無邪気な表情で…
ロイズは、不謹慎に
も、このまま記憶が
戻らぬ方が殿下にと
って幸せだろうと思
ってしまった。

だが、記憶が戻った
その時は、自分も一
緒に罪を償う覚悟も
決めていた。

ーー殿下、如何なる
時もお傍にーー


そんなロイズを見て
いたマルクスは静か
に頷いた。

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