《MUMEI》

「う……うう〜〜〜んん…………」

 目を覚ますとまず消毒液の臭いが鼻に突いた。

 ぼやけた視界が次第にはっきりし始めるが、やっぱりドコだか解らない。

 全体的に白を基調とした清潔感のある内装。複数のベッドに、ベッドを取り囲むように張ることの出来るカーテン。そして、室内全体に染み付いた消毒薬臭さ。

 どうやらここは医務室らしい。けど、どうして僕はこんな所に?

「ここは…………?」

 ベッドから起き上がろうとすると、胃の辺りがズキリと痛む。その痛みに自分の身に起きた事をまざまざと思い出した。

「おぉ、やっと目が覚めたかい?」

「ひぃっ!」

 衝立の奥から現れた男性が安堵の息を付く。しかし、険も取れ柔和になったその顔に、過剰なまでに恐怖を覚えてしまうのは仕方ない事だと思う。

「傷つくなぁ、なにもそんなに怖がらなくてもいいじゃないか?」

 さも傷付いたと言わんばかりに深々と溜め息を吐き出しながら近寄ってくると、ベッドの横に置かれていたパイプ椅子に腰掛ける。

「突然あんな事されたら、誰だってこうなります!」

「いやぁ、それについては陳謝するよ。まさか本当に何も知らないなんて思わなかったものでね」

 最初に会った時より幾分砕けた物言いに変わったような気がする。多分こっちの方が地なんだろう。

「いったい何なんです!何の目的があって、僕にあんな事をしたんですか!?」

「実力を知りたかったんだよ。即戦力として、直ぐにでも前線に出せるかどうか」

「即戦力?前線っ??僕を戦場にでも連れていこうって言うんですか!」

「う〜〜ん、当たらずとも遠からずって所かな」

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