《MUMEI》
虎之介先輩VS変態5
「じゃあ、『あーん』で、僕に食べさせて」

「…何で」

「僕が食べ物に関心が無いのは、多分環境のせいだと思うんだ」


変態は急に真剣に語り出した


「僕の家は、お金持ちで、両親仕事仕事で



家政婦に育てられた感じなんだけど

愛情をもった『あーん』はしてもらえなかったんだ…」

「そうなんだ…」


呟いたのは、俺


ではなく、虎之介先輩


「だからかな? ご飯食べるの、楽しくなくて…

いつの間にか、今みたいになっちゃったんだ」

「苦労、したんだな」


この相槌も、俺じゃなくて、虎之介先輩


「だからね、せー君。お願い。

僕に、愛情いっぱいの『あーん』を…」

「はい、あーん」

「ふぐう!?」


いーい、笑顔で


どこからか取り出したカレースプーンで、てんぷらを変態の口の中に口いっぱいに詰め込んだのは


渚さん、だった


「ふがんんふでえぇ!?」

「はいすぐ噛む。それですぐ口を開けなさい。

私が愛情込めて

いっっぱい、あーんしてあげますから」

「ふがあああぁ」


…あーあ


嘘つくから、いけねーんだぞー

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