《MUMEI》

今いる場所と目的地を確認する。
基本的には国道を歩いて行けばいいようだ。
途中で細い道へ入らなければならないが、目印にコンビニがあるので間違えることはないだろう。
ユウゴは道順を覚えると紙を織田に返した。
そして静かになったケンイチを振り返る。
「おい、さっさと行くぞ」
「ああ……」
すっかりふて腐れているケンイチを呆れた目で見てからユウゴは歩きはじめた。
まだ早朝ということもあり、歩いている人の姿はまばらだ。
車道には通勤の車が列を作っている。
それでも渋滞しているというわけでもなく、ゆっくりと列は移動を続けていた。
途中、織田に頼んでコンビニでパンなどを買ってきてもらい、歩きながら朝食を済ませる。
休むことなく歩き続け、目的地にたどり着いたとき、時刻はまだ八時前だった。
「けっこう早めについたな」
ユウゴは大きく息繰り返しながら言った。
時間には余裕があるとわかっていたが、自然と足は速まっていたらしい。
息が切れてしまっている。
それは織田とケンイチも同じようだった。
しばらく三人はその場に無言で立ちながら息が整うを待った。
「まだ、開いていないみたいだな」
いち早く回復した織田が車道を挟んだ向かいに建つ、小さな公民館を見ながら言った。
ユウゴは一度大きく息を吐いてから、そちらに目をやった。
二階建てで奥行きもない、まるでプレハブ小屋のような建物だ。
それでもそれが公民館だとわかるのは、入口の扉の横に公民館と書かれた木製の看板があるおかげだった。
その看板の横に手作りと思われる掲示板が置かれ、今日行われる講演会のポスターが貼ってあった。

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