《MUMEI》 . 亜美の言葉を追いやって、わたしは意を決し、携帯でメールを打ち始めた。 ****** to :タカヒロ sub :こんばんわ! ―――――――――――― メールも電話もしたんだけど、 返事がないから、どうしたのかな?と思って、またメールしちゃいました(笑) お仕事だったのかな? いっつも忙しそうだもんね。 時間、ある時で構わないから、連絡貰えると嬉しいです。 ではA ****** ―――賭けだった。 わたしは部屋の時計を見た。夜の8時になるところだった。 今夜、隆弘から連絡があったなら、 無条件で、彼を信じる。 でも、 もしも、何の連絡もなかったら、 その時は、 最悪のシナリオも、考慮するしか、ない。 携帯をベッドの上に放り投げて、わたしはその場に体育座りをした。 小さく身体を丸めて、祈るような気持ちで、目の前で黙り込んでいる携帯を、じっと見つめていた。 …お願い。 お願いだから、電話して。 わたしを、失望させないで。 必死の祈りも虚しく、 その夜、わたしの携帯が鳴ることはなかった。 ―――翌朝。 いつものように出勤したわたしの携帯電話が、 突然、鳴り響いた。 相手は、隆弘だった。 ****** from:タカヒロ sub :おはよう! ―――――――――――― 今日は、天気良いね〜!こういう日は、気分も明るくなるよね! 連絡遅くなってゴメン。 ちょっと、立て込んでて…。 来週、いよいよ会えるね。楽しみにしてるから。 それじゃ、また。 ****** メールを読み終えて、わたしは返事を返さず、携帯をしまった。 間違いなく、連絡は来た。 週明け月曜日の、お昼過ぎに。 …どうする? どう判断すれば良い? 無い知恵を絞ってみたが、答えなんか出てこない。 わたしはラボの窓から外を眺めた。 隆弘がメールで送ってきたように、空は澄みきっていて、一点の翳りもない。 その、美しい青空の下、 わたしの心は醜く濁っていく…。 . 前へ |次へ |
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