《MUMEI》
Lesson2
 「どうしてこうなるのよ!?」
道中の車内
何故自身がこんな状況下におかれなくてはならないのかと、只管藤田へと当たり散らす井上
藤田はだが何を返す事もせず聞くばかりで
漸く井上が喚く事に疲れ落着きを取り戻す
「……お前、相も変わらず良く喚くな」
藤田の溜息混じりの声
井上は頬を膨らませながら睨む事をする
「大体、パーティーって何なのよ。お金持ちの世界って本っ当わかんない」
「それについては俺も同感だ。正直付き合いきれん」
苦々しく表情を歪め、心底といった様子の藤田
返ってきたその言葉が意外だったのか、井上はまじまじと藤田の方を見やる
「何だ?」
その視線に気づき、聞き返せば
「ちょっと、聞いてもいい?」
改まって何か聞きたい事があるとの返答
一体何事か、と藤田は訝しんだが一応諾と首を縦に
「アンタさ、そんなに文句があるのに何でこの仕事続けてるの?」
嫌なら辞めればいいのに、との井上に、藤田は虚をつかれた様な顔で
だがすぐに困った様な笑みを井上へと浮かべて見せた
「それは常日頃から考えんでもないんだが。如何せん(契約)だからな」
「契約って?」
「従属契約。藤田の人間は必ずあの家に仕えなければならないってな」
「何?その変な契約。アンタの親父なんか弱みでも握られてたんじゃ無いの?」
聞くに余りにも現実味のない話
藤田もそれは常々思ってはいるらしく、話も最中深い溜息をつきながら
「俺もそう思って前に親父を締め上げた事がある」
更に苦い顔を浮かべてみせる
ソレでどうなったのかを問うてみれば
「……借金、してたらしい」
「借金?」
「ああ。うちの親父は無類の博打ずきでな。ある日調子に乗り過ぎて大損。莫大な借金抱える羽目になった」
「……最低」
「確かにな。で、家族総出で夜逃げって処まで追いつめられたとき、親父と何でか交流があったここの主人が借金を肩代わりしてくれてな」
「その恩があってアンタは此処に?」
「ま、そういうことだな」
話しも一段落し、目的地へ到着
藤田に手を引かれ車から降りた其処は
某所にある超高層ビル
その高さに井上は思わず口を開けたまま上を見上げ
「すごい……」
首が痛くなってしまいそうな程のソレに思わず声が出る
一体此処は何なのかを視線で藤田へと問うてやれば
「……うちの奥方の経営する会社のビルだ」
端的過ぎる説明が返り、そしてまた手を引かれそのまま中へ
エレベーターで最上階まで一気に向かい
そして着いたソコは、見事なまでの別世界だった
彩り様々に着飾った人々、鮮やかすぎる装飾
その全てが井上にとっては初めて見るものばかりで
暫くその場に立ち尽くしてしまう
「き、清正!」
居るに居た堪れなくなり、藤田へと思わず縋り付いて
どうすれば、何をすればいいのかと段々と混乱してしまった
すっかり動揺してしまっている井上
取り敢えずは落ち着かせてやろうと、藤田は唐突に井上の身体を抱え上げる
「な、何!?」
突然のソレに驚き、高くなった視線を見回してみれば
周りには大量の人間、そして集まる視線
見られているのが嫌でも意識され、井上は藤田の腕の中で暴れる事を始める
「降ろして〜!」
「暴れんな!落とすぞ!」
「落とすでも投げるでもいいから!早く降ろして〜!」
喚く井上に、周りがざわめく事を始める
アレがお嬢様の身代わりなのか
あの執事はまたお嬢様を誑かすのではないか
様々な言葉が聞こえてきた
漸く下へと降ろされると、井上は藤田の手を掴み逃げる様に部屋の隅へ
其処に都合よくあった椅子へと崩れる様に腰を降ろす
「馬ー鹿。思いっきり目立っただろうが」
「ご、ごめん」
「唯でさえお嬢様の件で噂になってんだ。これ以上は勘弁しろ」
深すぎる溜息
小難しげに眉間へと皺を寄せたその横顔を
井上は何となく眺め見る
口を開けば井上へは悪態しばかり吐く藤田だが、その容姿は随分と整っていた
「……何だ?」
まじまじ見る事をする井上へ藤田は怪訝な顔で
視線が重なって、井上は漸くその事に気付き
慌てて視線を逸らしていた
「……わ、私!」
「は?」
「の、喉渇いた!」
照れに動揺している事に気付かれないよう顔を伏せわざとらしい大声

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