《MUMEI》

「君のご両親あれかい?霊能力者だったりするのかい?」

「いいえ。父も母も普通の家系の普通のサラリーマンと普通の主婦だと思いますよ。そういった話は聞いた事ありませんし」

「そうか!それじゃあ君の霊力は遺伝ではなくて突然変異的なものなのか!」

「突然変異って……もっと違った言い方は無いんですか?」

「いやいや、失敬。あまりに珍しかったものでね。しかしそうすると、日頃の生活は随分苦労するだろう?」

「どうしてですか?別に苦労なんて、特に感じた事はありませんよ?」

「それならいいんだがね。そんなに大きな霊力をコントロールもせず、だだらに垂れ流されなんてしたら、周りの人間はさぞ、君の事を疎ましく感じたんじゃないかと思ったんだが、考え過ぎだったかな?」

「ちょっと待って下さい。それってどういう事ですか?」

 僕の中に不安が過る。心当たりが無いワケでもない。

「ん?何か心当たりでもあるのかい?」

「いえ、別に……そういうワケじゃありませんが……」

「まぁ、言いたくなければ言わなくてもいっこうに構わないんだがね。

 で、だ。時々報告に上がってくるんだよ。君のような天然の異常霊圧者の暴発事件なんかが」

 櫻井さんの話にしばし耳を傾ける。

「仕事上それらの調査資料なんかに目を通さなければならないんだが、すべからく異常霊圧者の末路は、身近な人間――学校のクラスメートや会社の同僚、最近だと両親や兄弟姉妹からの迫害を受け続けた末のストレスによる暴走という結末に行き着いてしまう」

「迫害?どうして人並み以上の霊力を持った人間が迫害を受けるんですか?」

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