《MUMEI》 「そうだな…………獰猛なヒグマの檻の中に閉じ込められた人間達の心理状況は理解出来ないかな?」 「ヒグマ!?それと迫害といったい何の関係があるんですか?」 「まぁまぁ、質問は全部聞いてからでも遅くはないだろう? で?どんな心理状態に陥るか解るかな?」 「いえ。解りません」 「ホントに解らないかい?自分の力では決して抗う事の出来ない、どうしようもない暴力の前に晒され続ける人の心理を?」 「僕はヒグマじゃないんだ。人を襲ったりなんかしません!」 「そう。そのヒグマも人を襲ったりなんかしない。いや、襲えないように手足を縛られ口を塞がれ、身動き一つ取れない姿にされていると言った方がいいな。 それでも狂暴な肉食獣と一つ檻の中といった状況は、普通の人間達にとてつもないストレスを与え続け、ストレスはやがて狂気を産み出す」 「……………………」 「狂気は時に判断を狂わせ、間違った行動を起こす引き金になる。この場合はまぁ、ヒグマへの攻撃としとこうか。普通なら反撃を受けてそれで終わりのはずが、先に言ったようにヒグマは身動きが取れない。殴っても安全だと解ったら人間はどうすると思う?」 「……解りません」 「狂気というのは三つの特性を持っているのは知ってるかな? 一つは、明らかに間違った選択を歪んだ理屈で正当化したり魅力的なモノにデコレートする事。 もう一つはレンジの中のマシュマロのように非道く膨らみ易い事。 そして最後の一つは、欠伸よりもお手軽に人間の間を伝染し易い事。 それと人間は自分の身の安全が確保されると、それがどんな危険な事であっても割と平気で出来てしまうものなんだ。 話を元に戻すが、攻撃しても安全と解れば、例え自分より大きな存在であろうと、平気で傷付ける事が出来る。そしてそれは天井知らずにエスカレートしていく。 そうなったら無抵抗なヒグマ……霊力の扱いを知らない異常霊圧者はどうなると思う?謂われの無い迫害を、いつ終わりを迎えるか解らない攻撃を受け続ける者は?」 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |