《MUMEI》

「そんなバラエティーの企画みたいな生活は嫌です!もっと他には、霊力を封印する方法とか、切り離す方法とかは無いんですか!!」

「そうだねぇ……。霊力を封印する方法が無いワケじゃあ無いが、素人が一人でするんじゃリスクが高過ぎると思うがな。もしくは途方も無い時間が掛かるか」

「どうして一人でする事前提で話をしてるんですか!櫻井さんは助けてくれないんですか!?」

「無理は言わないでくれないかな。これでもウチは慢性的に人手不足な上に、殺人的に忙しい部署なんだ。悪いけど君一人の為に貴重な戦力を割ける程の人的余裕は無いんだよ。もし今から予定を入れて順調に行けば…………」

 ポケットから携帯を取り出し、ふしくれだった太い指で不器用に操作する。

「7年後の秋頃だったら、君の霊力封印を執り行う事が出来るかも知れない」

「そんなに待てるワケないでしょう!その前に暴走しちゃったらどうするんですかっ!?」

「そうなってしまったら、御愁傷様としか言い様がないかな」

「そんな言葉で済まさないで下さい!これには人の、僕の命が架かってるんですよっ!!」

「しかし、今予定に入っている全ての案件も放っておくと数十から数百人、下手をすれば数千もの人間の命が危険に晒される可能性が有るモノばかりなんだ」

「そんなっ!僕だって暴発すれば数十人って人間を巻き込む事故になるんでしょっ!!」

「そうならないように努力してほしいな。せっかく話してあげたんだから」

 死にたくない一心で必死に詰め寄る僕を、櫻井さんは闘牛士のようにスルリといなす。

「そんなぁ〜〜…………」

 絶望の淵に立たされた僕は膝から崩れ落ちる。この世には神も仏もいないのだろうか?

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