《MUMEI》

「ほぉ、理解出来たか」



つまり、さっきまでの獣臭は、僕の嗅覚がつくりだした『偽りの臭い』


実際には、そんな臭いなどしていなかったのか…



「言うなれば、防衛本能からの危険信号を、オマエの嗅覚を利用し伝えてきたのじゃ」



「…なるほど」





「ククッ…不思議なもんじゃな…。さっきまで、なにもかも疑っていた男が、こんな馬鹿げた話を簡単に受け入れとる」



「…あッ」


ゴローさんの一言で、現状を納得している自分とさっきまで疑いに満ちていた自分に気持ち悪い程のズレを感じた



「オマエの本能が悟ったのじゃ。この世に『妖』が存在するということをな…」



そう言ってゴローさんはケラケラ笑った

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