《MUMEI》

実用的な物大好きです。

助かります、ありがとう隆志。

「なー今日伊藤さん笑い者になってたぞ?なんであんな事すんだか」

『アハハ、手元が狂っちゃったの!でもおもしろかっただろ!』

「おもしろいけどちょっと可哀相だったよ、つか刃物傷って一生消えねーのわかってんのか?伊藤さんは一生あんな場所に一本の跡がつきっぱなしなんだぞ?」

そう。俺の首の傷も隆志の背中の傷も、これは一生消える事はない。

年々少しづつは目立たなくなるけど、完全には絶対に消えないんだ。

『マジで?』

「マジだよ、おまえ謝ったろうけどもう一回謝っとけよ?
いくらドーランで隠せるっつたってお前、役者の顔に傷つけたんだからな?結構ヤバイ事したの自覚しろよな?」


『……、』


「…」


あ、ちょっと言い過ぎたか…


「でもな、伊藤さんも一緒に笑ってたから…」


『ふふふ…、アハハ…』


「ゆ、裕斗?」

ヤバイ!言い過ぎておかしくなったか!?

「ごめん、言い過ぎた!あのさ!裕斗…」

『アハハハハハっ!鼻血とか鼻水とか出たら傷痕にそって流れたりして!
川の流れ道かよ!アハハハハハッ!!』

「……、あのなあ」


伊藤さん…




伊藤さんは本当にこんな奴でいいのか?


あ…





……




俺、こいつやめて本当によかった…。










今日の伊藤さんは帰りが早かった。
せっかく見に来てくれた佐伯さんの相手もそこそこに帰った。
まあ今日は仕方ないけどね、でもおかげで反省会もなかったから今日は和やかに解散した。
それでまあ、俺はというと


「加藤君まだ未成年だったんだ、じゃあジュースで乾杯しようね」

「はい」


なんと!佐伯陸さんに食事誘われました!



たまにも来ない様な高級なレストラン。テーブルに置いてあるキャンドルがめちゃめちゃ綺麗。



まるで俺が誕生日みたいだ。

佐伯さんの顔を見ると、ニッコリ微笑まれた。



「ここのステーキは凄く美味しいよ?
あんまりかしこまらないで遠慮なく食べなね?」

「はい、ありがとうございます」





佐伯さんも俺に付き合ってオレンジジュースを頼んでくれた。

大人だな、うん。


オレンジジュースで乾杯して、そして佐伯さんのリードで会話が弾みだす。

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