《MUMEI》
実用的な物大好きです。
助かります、ありがとう隆志。
「なー今日伊藤さん笑い者になってたぞ?なんであんな事すんだか」
『アハハ、手元が狂っちゃったの!でもおもしろかっただろ!』
「おもしろいけどちょっと可哀相だったよ、つか刃物傷って一生消えねーのわかってんのか?伊藤さんは一生あんな場所に一本の跡がつきっぱなしなんだぞ?」
そう。俺の首の傷も隆志の背中の傷も、これは一生消える事はない。
年々少しづつは目立たなくなるけど、完全には絶対に消えないんだ。
『マジで?』
「マジだよ、おまえ謝ったろうけどもう一回謝っとけよ?
いくらドーランで隠せるっつたってお前、役者の顔に傷つけたんだからな?結構ヤバイ事したの自覚しろよな?」
『……、』
「…」
あ、ちょっと言い過ぎたか…
「でもな、伊藤さんも一緒に笑ってたから…」
『ふふふ…、アハハ…』
「ゆ、裕斗?」
ヤバイ!言い過ぎておかしくなったか!?
「ごめん、言い過ぎた!あのさ!裕斗…」
『アハハハハハっ!鼻血とか鼻水とか出たら傷痕にそって流れたりして!
川の流れ道かよ!アハハハハハッ!!』
「……、あのなあ」
伊藤さん…
伊藤さんは本当にこんな奴でいいのか?
あ…
……
俺、こいつやめて本当によかった…。
▽
今日の伊藤さんは帰りが早かった。
せっかく見に来てくれた佐伯さんの相手もそこそこに帰った。
まあ今日は仕方ないけどね、でもおかげで反省会もなかったから今日は和やかに解散した。
それでまあ、俺はというと
「加藤君まだ未成年だったんだ、じゃあジュースで乾杯しようね」
「はい」
なんと!佐伯陸さんに食事誘われました!
たまにも来ない様な高級なレストラン。テーブルに置いてあるキャンドルがめちゃめちゃ綺麗。
まるで俺が誕生日みたいだ。
佐伯さんの顔を見ると、ニッコリ微笑まれた。
「ここのステーキは凄く美味しいよ?
あんまりかしこまらないで遠慮なく食べなね?」
「はい、ありがとうございます」
佐伯さんも俺に付き合ってオレンジジュースを頼んでくれた。
大人だな、うん。
オレンジジュースで乾杯して、そして佐伯さんのリードで会話が弾みだす。
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