《MUMEI》

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トレードマークとなっていた眼鏡を外し、キレイに化粧を施して、女性らしいリゾート風ワンピース姿で出勤してきたわたしに同僚は、皆一様に驚いた顔をした。

「山本さん、どうしたの?」

「今日、すっごいおめかししてるね?」

次々に飛んでくる同僚達の言葉にわたしは苦笑しながら、スカートの裾を摘まんだ。

「変?似合ってないかな?」

尋ねたわたしに、彼女達は首を振る。

「とても、似合ってる!絶対眼鏡外した方が良いよー!」

「そのワンピース、かわいい!どこで買ったの?」

「お肌もキレイだし、羨ましい〜!」

キャアキャアと黄色い声をあげ、わたしを揉みくちゃにした。

わたしは褒めちぎる彼女達に、「ありがとう」とお礼を述べてから自分の席に座り、バッグからテキストを取り出した。

そんなわたしに、同僚の一人が「ねぇねぇ!」と華やいだ声をかける。

「もしかして、今日、デート?」

彼女の言葉を皮切りに、他の同僚達も詰め寄ってきた。

「デート?彼氏いたんだ!」

「最近かわいくなったもんねー!?」

「幾つくらいの人?どこで知り合ったの?」

矢継ぎ早に質問をしてくる彼女達の華やいだ顔を見つめて、わたしは笑って誤魔化した。




今日、講師の代わりにわたしが受け持った授業は、基本的な発音矯正だった。

フランス語は発音が難しいと、良く聞く。確かに、日本語にはない発音方法のものばかりなので、皆、口を揃えてそう言うのだろう。

フランス語を話す為には、もちろん文法を覚えることも大切だが、何よりきちんしたと発音が出来ていないと、ネイティブのフランス人はそれをフランス語と受け取ってはくれず、あっさり無視されてしまうことも良くある。

だからこの学校では、よりネイティブに近い発音が出来るように、文法を学ぶのと同じくらいの時間を授業に取り入れているのだった。


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