《MUMEI》
蒼の槍使い
「そこの二人!逃げろ!!」
声が・・聞こえた。
蒼い、一陣の風が横を走りぬけ、リザードマンへと突撃する。
「テイルフロウ!!」
槍の軌跡を遅れて白光が描きリザードマンを壁に叩きつける。
「何をしている!急げ!!」
蒼い長髪、リースが声をかける。
「リース・・」
「狩月!?」
一瞬こちらを振り向いたリースが驚いたように声を上げる。
キシキシキシ・・
壁に叩きつけられたリザードマンが笑いながら立ち上がる。
赤黒い鱗は、血によって汚れたモノだと遅れて把握した。
「はぁ!!」
槍が白光を纏って突き出される。
キィィィ・・
手にした剣で受け流すリザードマン。
激しく火花が散りリースが脇を抜けようとしたその時に左腕がリースの顔を狙って振るわれる。
槍を旋回、柄でその一撃を受け止め、そのまま後方へ飛ぶリース。
キシキシキシ・・
余裕を見せるかのように声を上げるリザードマン。
意を決したように槍を大きく旋回させ構え直すリース。
「・・・深々と空が啼き、」
リースの声が流れる。
白光が蒼く染まっていく。槍が共鳴するよう強く輝く。
「刻、酷と時が続く、」
歌うように紡ぎながら、槍が踊るように次々と突き出される。
リザードマンが剣で応戦し、薄暗い洞窟内に火花が散る。
「トキはただ・・」
詩が続く。
槍の速度はドンドン速くなり、強い光を纏う。
リザードマンの反撃にリースが傷つき、鎧を紅く染めていくが、リースは詩を止めず、攻撃の手も緩めない。
「死者を抱く。」
蒼い燐光、踊る槍、散る紅。翻る蒼い髪。
「奇跡は訪れない。」
リザードマンが防戦一方になっていく。
「夢など・・」
翻った槍が、ガードした剣ごとリザードマンを浮き上がらせる。
貫く槍。
鱗を簡単に貫き、リースがリザードマンの背後に佇む。
「存在しないのだから・・」
静かなリースの声のみが響く。
「サイレント・ロンド。」
槍に纏っていた蒼い燐光が収束する。槍が再びリザードマンを貫く直前、
パリィィン・・
清音が響き、蒼い燐光が爆ぜる。
リザードマンは、奥へと吹き飛ばされて行き・・見えなくなった。
リースは弾かれるように10メートルほど後ろへと吹き飛ばされ、地面に膝をつく。
槍から燐光は消えさっている。
戦いに魅入っていた狩月が慌ててリースへと駆け寄る。
「リース・・大丈夫か?」
「・・・姉さん・・私では、使いこなせないのですか?」
小さく呟かれた言葉。
「リース?」
狩月の声に反応し、顔を上げるリース。
「あぁ、深い傷は負っていない。ただ魔力を使いすぎただけだ。休めばすぐに直る。とにかく出口へ急ごう。もう一度、モンスターが出現したら、追い払う力は・・無いだろうから。」
槍を杖代わりに立ち上がると、出口に向かって歩き出す。

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