《MUMEI》
呼び方2
「呼び方…」


神澤は、考え込んでいるように見えた


神澤


名前、…コンプレックス、あるよな


「親しくなったら名前呼び? ホント?」

「普通はな」


答えたのは、修治だったが


「ホント?」


綺麗にスルーして、神澤は俺に質問してきた


「まぁ、…名前、コンプレックスとか、無ければ、な」


相手が嫌がるなら、呼びたくねーし


「…」

「か」


キーンコーンカーンコーン


考え込む神澤に話しかけようとしたら、チャイムが鳴ってしまった


「じゃあな」

「またね」

「あ、あぁ」

「…」


既に席にいた皐月以外は、自分の席に向かった


とりあえず、授業、だな


慌てて教科書やノートを取り出す俺とは反対に


神澤は、何もせず


ただ、俺を見つめていた


「教科書位は、出した方がいいぞ」


次元が違う程頭がいい神澤は


ロクに教科書も見ないし


ノートも出して無かった


「誠」

「ん?」

「薫って呼んで」

「…は?」


…ドキッとした


「薫って、呼んで」


その目が、顔があまりにも、真剣で


ドキッとした

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