《MUMEI》

 しかしその時、曇天から一筋の光が差し込み、路頭に迷った僕を照らし出す。

「まぁ、全く方法が無いワケでも無いんだが……」

 光の中を一本の蜘蛛の糸がスルスルと降りてきた。

「何ですか!その方法って言うのはっ!?」

「あぁ、やっぱり駄目だ!今のは忘れてくれっ!!」

 これが最後のチャンスかも知れないと飛び付いても、蜘蛛の糸はからかうように降りてきた時と同様、スルスルと曇天の隙間へと帰っていく。

「いったん有るって言っておいて、やっぱり忘れてくれだなんて出来るワケ無いでしょう!?
 教えて下さいっ!その方法って言うのは何ですかっ!!」

「いや、しかしなぁ……この方法は君にかなりの負担を掛ける事になるし…………」

 渋い顔で出し惜しみをする櫻井さんに必死に食らい付く。もう一息で何とかなるかもしれない。

「こっちは命が架かっているんです!助かるんであれば何でもしますからっ!!」

「本当に何でもするのか?」

 僕の不用意に放った一言に、櫻井さんの目がキラリと光った。

「本当に何でもする覚悟はあるのか?」

「え、あ…は、はい…………」

「何だか頼り無い返事だなぁ……。ホントに助かりたいと思っているのかい?」

「も、もちろんです!」

「よし解った!
 じゃあ、方法を教えてあげようじゃないか!」

 パシンと腿を叩いてついに決心してくれる櫻井さん。

「あ…ありがとうございます……。それでその方法と言うのは?」

 蜘蛛の糸を掴んだはずなのに、何だかそれがナゲナワグモが使う、投げ縄の罠に絡め取られてしまったような気がするのは考えすぎと言うものだろうか。

「何、方法自体は簡単だ。ウチに入局して働けばいい」

「へ?」

 考えてもいなかったというよりも、考えの枠の外に追い出していた答えに、一瞬思考が停止する。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫