《MUMEI》

―何だ?SCか!?―

反射的に瀧は足を止める。綾乃の目前でナイフは止まっている。
―否―
何かに止められている。


「な、何だよ!?何で動かないんだよ!?」


中野くん自身も訳がわからないらしく、何度もナイフを動かそうとする。
その度にナイフの止まった空間から波紋が広がる。


「これ、何?」


綾乃はそっと自分の目の前に広がる波紋に触れてみる。

―ピチョン―

小さな水音と共に指先が濡れる。


「水…これ、水の膜、なの?」


不思議そうに触れていたが、くるりと瀧を振り返ると

「ねぇねぇ!これスゴくない!?あなたしてくれたの?サンキュー♪」


綾乃からの言葉に瀧は心底脱力した。


「俺じゃ…ねーよ…」


それを言うだけが精一杯だった。

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