《MUMEI》

そこにわざとらしい笑顔を顔中に張りつかせて映る男を見て、ユウゴは今日の標的を再確認する。
「あいつってなんて名前だっけ?」
同じようにポスターを見ていたケンイチが首を傾げる。
「実川だ。下の名は知らないけど」
ユウゴが教えてやるとケンイチは「ふうん」と頷いてから「ま、別に名前とか興味ないけど」と付け加えた。
それなら聞いてくるなよと軽くケンイチを睨み、ユウゴは頭の中を落ち着けるために小さく息を吐いた。
「よし、じゃあ今のうちに計画を決めよう」
ユウゴは提案したが、それを聞いたケンイチが軽く鼻で笑った。
「なんだよ」
「いや、計画なんて無駄じゃん。相手が何人護衛を連れてくるか、何時に来るか、あと公民館の中がどういう間取りになってるか、何も知らないのに。どうやって計画練るわけ?」
「それは……」
言い返そうとしたユウゴだったが、たしかにケンイチの言うことはもっともだ。
言い返す言葉を探していると織田が「流れをイメージしておくだけでも違うだろう」と助け舟を出した。
ユウゴは頷く。
「そうだ。無計画に突っ込んで行くよりも、なんとなくでも決めといた方がいいだろ」
「ふうん。そんなもんかね」
ケンイチは言ったが、別に文句があるわけでもないようだ。
ユウゴは小さく頷いてとりあえず思いついたことを話し始めた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫