《MUMEI》

「あのねっ、俺達アキラさんに用事があって来たんだ♪」
「えっ!僕に?」

突然やってきた男の子達は、どうやらお兄さんにではなく僕の方に用があって来たらしい。

でも、どうして?



「おっじゃましま〜す♪」
「おじゃまします…」

二人を部屋に上げると、今まで静かだった部屋が急に賑やかになった。

「どうしてココが分かったの?」
「あのね、克哉兄ちゃが地図送ってきたりしてくれたの、滞在先はココだって、ね、はるちゃん♪」
「あの、コレです…」

そう言うと物静かな方の子が、僕に送られてきた地図を見せてくれた。

「あぁ…さすが克哉さんだなぁ」
「うん、兄ちゃはすごいんだよ♪」

得意げに笑っていた髪がクリクリした子は、ちょっと視線を落とすとモジモジしながら抱えていたバッグを前にして僕を上目遣いで見つめてきた。

「…それでね、今日頼みたい事があって来たんです」

クリクリな髪の元気な方の子はその持っていたカバンを床に置くと、ファスナーを開け、その中をゴソゴソと探っていた。

「あの、アキラさんって日本の大人の人だから分かるかなと思って」
「何かな?」
「この…着方って分かります?」

そう言うとそのバックの中から華やかな浴衣を取り出して、僕の目の前に広げてくれた。

「あぁ浴衣だね、知ってるよ…でも…」

落ち着いた色の浴衣は男の子用だというのはすぐに分かったけど。

元気な子が見せてくれたものは男の子用にしてはちょっと色が明るくて、帯も男の子用ではまず見ない色だった。

「…それって女の子用だよね?」

白地にピンクや黄色や水色の綺麗な柄に、ヒラヒラの兵児帯。

「うん俺、女の子の着るんだ♪綺麗でしょ♪」
「キミが?…う〜ん…そうだね似合うかもね」

元気の良い子はそう言うと、頭に付けるんだと言って僕に可愛らしい飾りを見せてくれて、明るい色の浴衣を羽織りながら嬉しそうにクルンと一回転していた。

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