《MUMEI》

「おら、そこどけ!」


安藤は凄い勢いで駆けて来る。


誰がどくか!


俺は身構えた。


奴は必ず何か仕掛けて来るはず。


左からか、それとも右からか……。


相手の動きをよく観察し、
次の一手を考える。


まずはスピードを見極めるんだ。


通常、相手が仕掛けて来る前はほんのわずかだが、
スピードが落ちる。


そこでドリブルやフェイントを掛けられるのだが……。


なんと安藤にはそれが無かった。


俺との距離が後数メートルを切っても、
安藤は同じスピードで向かって来る。


このまま抜き去る気なんか?


それともよほど俺を抜き去る自信があるのか……。


だが後1メートルになった時、
安藤は仕掛けて来た。

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