《MUMEI》

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卒業パーティを終えた後、仲間達は皆、それぞれに就職していった。ディプロムに向けて勉強する傍ら、その先の将来を見据えて、きちんと就職活動をしていたらしい。


対してわたしは、


目先の、卒業にしか焦点を合わさず、偶然持ち合わせていた才能の上に胡座をかき、ちっとも努力もしないで、


最後に、出遅れた。



全てが、遅かった。

焦ったところで、もう思ったような求人も無く、

結局、通訳になる夢を諦めた。



―――怖かった。

今さら真剣に就職活動をして、不採用にされることが。4年間、脇目も振らず打ち込んできたわたしの全てを、いとも簡単に拒絶されることが。


ディプロムの悲惨な結果を目にした瞬間から、


あの、溢れ返るような自信は、とっくに無くしてしまっていた。



黙り込んでビールを飲むわたしをじっと見つめて隆弘は、淡く笑った。

「…なんか信じられないなぁ」

突然、譫言のようにぼんやりと呟いた彼を、わたしは見つめ返す。
グラスを置きながら、「何が?」と尋ね返すと、隆弘はまた笑った。

「こうして、皐月さんと二人でいること。あんなところでいきなり声かけてさ、俺、絶対、不審者だって思われたよね?」

そう返されて、「確かに」と、わたしも笑った。

「びっくりしましたよ。普段、男の人に声かけられることなんか、ないから」

わたしの返事に隆弘は驚いたように、「ウソだぁ!」と明るく返した。

「皐月さん、美人じゃん。ナンパとかよくされるんじゃないの?」

探るような言葉を聞いて、わたしは吹き出した。「まさか!」と笑って否定する。

「ナンパなんか、全然されないですよ!彼氏だって、ここ3年いないし」

3年前、恋人と別れてから、男の人とちゃんと付き合ったことがなかった。もちろん今日までに、何人かの人達と、二人っきりで映画や食事に行ったりなどは何度かあったが、長く続くことはなかった。

相手も本気ではなかったのだろうし、わたし自身、彼らとより深い関係になることを、望んでいた訳ではなかったから。


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