《MUMEI》

「そうそう。ここの組織構成について、ひとつ簡単に説明しておこうか」

 医務室の扉を潜って間もなくの事。歩きながら櫻井さんが話し始める。

「我が『霊障清掃局』は『分析課』『清掃課』『処理課』『開発課』の四つの課からなっている。

 それぞれ課の役割は、名称から大体の事は憶測出来るとは思うけど、まず初めに『分析課』から説明すると、事件発生時の現場維持や、犯行を行ったのがどういう類いのモノなのかを調査したり、また、古文書や伝承、これまでに起こった様々な怪異に関する情報の収集・管理・解読を行い、これから起こるであろう怪異事件を、発生前もしくは初期の段階で発見する事を目的とした課だ。

 続いて『清掃課』だが、ここは簡潔に言うと、妖怪変化の類いとの戦闘を主目的とした課だ。勿論、他にも仕事はあるがね。3〜5人で一つの班を成していて、日本中をたったの十数班で護っている。関東には第一班と第二班の2班だけしか滞在してないのが現状だ。慢性的な人手不足に殺人的な忙しさの意味が解るだろう?

 次に『処理課』の話に移るが、この課は清掃課が清掃活動を行っている際、地域住民が清掃区域に無闇に近付かないよう、また清掃区域から清掃対象が離脱しない為の防波堤の役割と、清掃終了後の霊気や妖気の残りカスといった霊障の種になりそうなモノの処理作業を行ってくれる課だ。

 そして最後に残るのが『開発課』。ここは霊障清掃局が活動する為に使用する、あらゆる道具の開発を行っている。例えば、霊感の無い人間に霊の姿を見せる霊視コンタクトレンズや対霊用の武器、霊力の増幅装置なんかがそうだ。まぁ、実物を見ない事には今一つピンとはこないだろう。

 で、君の配属先なんだが……」

「叔父さぁ〜〜〜ん……!」

 唐突に遠くから呼び掛けられる可愛らしい声が、櫻井さんの饒舌に水を指す。声の主は、前の通路からトットコ走ってくる人影だった。

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