《MUMEI》

―守る―

その言葉の重さは
痛いほど知っている
叶わなかった時の
絶望も知っている

そして、今まで自分の側で見てきた半身が
知らない筈がない


《それでもお前は俺にそれを言うのか?》


問いに答える声は聞こえない。



「ちょっと、大丈夫?」


黙り込んだ瀧を心配そうに覗き込む綾乃の顔が目の前にある。


「おぉ、平気だぜ。……お前…本気で今の生活捨てて構わねぇのか?」


「今更何よー、乙女の一大決心に水指すの!?」


この数時間の間に見慣れたむぅ、と唇を尖らせた顔をする。
ふっ、と瀧は笑った。


「上等…来いよ」


「まっかして!」


そうして二人は握手を交わした。

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